吉本ばなな「体は全部知っている」

体は全部知っている

短編集。
トップランナーに出たとき ばななさんが自分の作品の中で
気に入っている本としてあげていたので 読んでみた。


こういう こころとからだのつながりがテーマになっているような話が
もともと好きなので 楽しく読めた。


「みどりのゆび」
主人公が 末期癌でもう意識のない祖母 のお見舞いから帰ってきて
祖母の部屋で じっと座り 植物たちによってはげまされる部分の描写が
すごく良くて 泣けた。


「黒いあげは」
この人の小説には 本当によく 風変わりな父と母が出てくる。
ここに出てくる母も 自分が浮気しておいて
家出した夫を許すとか許さないとか言ってる変な人。
でも この変な明るさが 可笑しみがあっていいかんじ。
家出した夫が帰ってきたら みんなで出むかえるために
こどもたちに学校は休めといい
庭でバーベキューをおっぱじめる母。
お酒をのみ、肉と野菜をおいしく食べながら
この母が言った台詞。

「つまんないことがある時は、気をつけてみれば、
 もう一方にはちゃんと、こういうわくわくすることが隠れてるのよ。
 神様はちゃんと考えていてくださる。」

が よかった。


「おやじの味」
この話が なんというか いちばん深く共感できたかんじ。


都会の生活に疲れて からだをこわし 会社をやめて 
山小屋で一人暮らしをする父(ここにもまた風変わりさんが)のもとへ行く主人公。


早起きをして 二キロ離れたパン屋まで焼きたてのパンを買いにいったり
ワイドショーを見たり コーヒーをのんだり そうじをしたり
夕方スーパーへ買い物に行ったり。
そんな生活をするうちに どんどん頭がクリアになっていく。
ここで出てくる一文。

パンを買うときはパンのことだけだ。

というのが いいなあ と思った。

他にも気に入ったフレーズがもりだくさん。

生きていることに意味をもたせようとするなんて、そんな貧しくてみにくいことは、
もう一生よそう、と思った。


「前向きで正しくて納得のいくことというのが ひとつもない」
「ただ 今現在があるのみ」


そーゆうのも いいよねぇ と思った。